オリコ(オリエントコーポレーション)への過払い金請求

取引履歴の開示

取引履歴の保存・開示の範囲

 オリコが説明しているところによれば、オリコが開示する取引履歴は、貸付については1995年4月時点で分割支払いが残っている貸付の記録が残っており、返済については1990年1月5日以降の記録が残っていて場合によっては1989年7月1日以降の記録が残っているということです。
 その結果、1995年4月からは全部開示、それ以前は一部開示ということになります。わかりにくい話ですが、それぞれの貸付ごとに借主が分割回数を指定できるというしくみのために、貸付記録が不規則に残るということです。例えば1993年10月に20回分割で10万円、1993年11月に15回分割で8万円、1994年3月に10回分割で6万円、1994年6月に10回分割で5万円、1994年8月に6回分割で4万円、1994年10月に10回分割で7万円を借りたとします。するとオリコの説明に従って考えると1993年11月の8万円、1994年3月の6万円、1994年8月の4万円は1995年3月以前に完済となって貸付記録が残らず、1993年10月の10万円と1994年6月の5万円と1994年10月の7万円は1995年4月時点で返済が終わっていないので貸付記録が残るということになります。このあたりの説明は、エポスカード(丸井)と同じことになります。ただ、丸井の場合、貸付も返済も同じ時期が基準で残っているというのですが、オリコはなぜか貸付のデータと返済のデータで残っている基準時点が違うというのです。

オリコの特徴:売上連番と推計

 オリコは取引履歴とは別に「入金履歴」という形のデータを持っています。
 オリコの場合、1回1回の貸付について借主が分割払い回数を指定し、毎月の返済はその合計になります。この「入金履歴」には、各返済ごとに、連番(売上連番)を振った1つ1つの貸付の元本と手数料(利息)の内訳が記載されているのです。例えば1990年4月27日の入金242,007円の内訳は連番5003の貸付の元金100,000円、手数料3,709円、連番5004の貸付の元金32,385円、手数料4,044円、連番5005の貸付の元金100,000円、手数料1,869円といった具合です。この売上連番は、「入金履歴」では常に(5000番台は)5001から始まっていることから考えて、貸付時に振っているのではなく、入金履歴作成時に便宜上振られるものだと考えられます。
 取引履歴開示が不完全な場合(1995年4月より前から取引がある場合)、この「入金履歴」から、ある程度までは遡って推計ができます。以前は、取引履歴と一緒に送ってきたこともありましたが、要求しないとくれなくなり、近年は裁判前は要求してもなかなかくれなくなっています。

 オリコの推計方法は、各回の返済に対応する売上連番ごとの元金(「内訳」欄に元金と記載された金額)を合計して貸付額を推定し(順次見ていってその番号が出て来なくなるまでのその番号の元金を合計する)、売上連番ごとに2回目の返済の手数料額と貸付額から初回元金返済額を引いた額(初回返済後残元本)から約定利率を推定し、貸付額と推定した約定利率と初回手数料額から貸付日を推定するという手法をとります。自社の約定利率を推定しなければならないというあたり、それだけで怪しい話ですが、オリコは約款類さえきちんと保存していないのでそれぞれの時期の約定利率を特定できないと述べています。

交渉・裁判対応

 取引履歴未開示部分については、入金履歴が残っていて、オリコが5000番台の売上連番を振っているものについては、少なくとも裁判になった段階では、オリコ側で推計をしてきます。入金履歴では、売上連番が1000番台の貸付と売上連番がない貸付が記載されていることがありますが、オリコはこれは推計の対象から外してきます。この部分について、こちらで同様の推計をしたり、それと別に借主が古い通帳を持っている場合に特にその引き落とし額から1回払いの借入と合理的に推測できる場合にその推計をして、オリコ側とそれを前提に和解したこともあります。
 私が経験した限りでは、オリコは裁判になった場合の和解では、きちんと理屈のつく額ならばそれほど金額には固執せず(推計にきちんと根拠があればあまり値切ってきません。しかし、理屈がないアバウトな和解案にはなかなか乗ってきません)、むしろ支払を遅らせることに異様なまでの執着を見せます。以前でも和解後支払まで6か月という線に徹底的に固執し、最近は8か月とか9か月を平然と主張してきます。オリコが破綻する兆しは見えませんし、和解金額を決める時点で支払日までの過払い利息全額を乗せてくれますので、金額的には多くなり、悪くない話という面もあるのですが。

裁判上の主張

 オリコは、以前から、基本契約が同一の場合(信販会社は消費者金融と違って、完済後しばらく借入がない状態が続いた後の再借入でも改めて契約書を作成するということはしていません。というか、そもそも取引開始にあたって、「入会申込書」を書かせるだけで、契約書は作っていないのがふつうです。それに、借入がない期間中も年会費は引き落としていますし。ということで、常に「基本契約が同一」のケースになります)の取引の分断の主張に力を入れています。
 そのほかには、1回払い取引はリボルビング取引と一体の計算ができない、1回払い取引の過払い金はその後の(1回払いの)借入金に充当されない、その1回払い取引の過払い金は(その後の借入金に充当されずにそのまま残っているから)過払い発生から10年で時効消滅するなどの主張をしています。この論点についての議論と、この論点に関して東京地裁2020年3月27日判決で一連計算が認められ、その間に1年程度の空白期間があっても一連計算できるとされたことは、「過払い金請求訴訟の論点」で紹介しています。
 オリコがさまざまな主張を考えてチャレンジし、それが近年では他の信販会社も追随して、信販会社一般が主張するようになっているという感じです。


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