ニコス(三菱UFJニコス)への過払い金請求

 ニコス(三菱UFJニコス、旧日本信販)の過払い金債務は、現在その一部がMUニコス・クレジットに吸収分割(きゅうしゅうぶんかつ)という手法を使って承継されています。取引履歴請求は三菱UFJニコスに対して行い、取引履歴開示の事務は、MUニコス・クレジット分もすべて三菱UFJニコスが(業務委託を受けてと言っていますが)行っています。その回答書に、この債権についてはMUニコス・クレジットが承継していると書かれている場合は、過払い金請求はMUニコス・クレジットに対して行うということになります。

取引履歴の開示

ニコスの開示(債権届出書)の特徴

 ニコスは、取引履歴の開示に際して、カード別に契約日(入会日)を明記し、自ら利息制限法引き直しした金額を書き込んだ「債権届出書」を送ってきます。この利息制限法引き直し計算では、もちろん、過払い利息は乗せていません。契約日の記載があり、その結果契約日と開示初日の間の未開示期間が最初にわかるので、さまざまな工夫のしようがあります。

取引履歴の保存・開示の範囲

 ニコスが説明しているところによれば、ニコスの取引履歴保存時期はカードによって異なり、ニコスブランドのカード(「マイベスト」、「NICOS.Visaカード」等)は、1995年1月とか1994年11月から保存しているということで、それ以降の取引履歴が最初から利息制限法引き直し計算書の形で送られてきます。
 かつては一律に1995年7月以前の取引履歴はないと言い張っていたのに2007年11月になってそれは誤りで「マイベスト」のATM型については1991年9月から、「マイベスト」の口座振替型は1994年11月からの取引履歴があったと言い出したこと、子会社の南日本信販が調停で保存している取引履歴を隠蔽して一部だけを開示した計算書を提出し借り主に不利な和解をさせたことや取引履歴の開示を拒否したことで2006年11月10日に南日本信販大分支店について12日間の業務停止の行政処分を受けたことなどから、本当にそれ以上の取引履歴が保存されていないのかは怪しいところです。

交渉・裁判対応

 ニコスは、かつては、裁判では、主張の提出のペースが遅く、裁判前に出している債権届出書ベースの主張さえ最初からはせず、期日を重ねてからようやく裁判前に出している債権届出書に過払い利息を乗せた額の和解提案をし、主張としては、未開示部分について推計で請求した場合にその推計の根拠がないという批判は繰り返ししてきますが、それ以外の主張はあまりしてきませんでした。
 和解については、小出しの譲歩で時間をかけますが、金額の根拠についてはあまりこだわらず、アバウトな和解(足して2で割るとか)にも乗ってきていました(譲歩を小出しにするので、いっぺんに中間に来ることはほとんどありませんが)。
 近年、ニコス側の姿勢が変わり、過払い金をめぐる最高裁判決について特異な読み方をして、変に理屈をこねる主張をあれこれするようになりました。昨今は、通るかどうかは度外視して、さまざまな主張にチャレンジしているという感じです。
 ただ、今のところ、私の経験では、あれこれ主張をしたうえで、では判決に行こうとするかというと、そうはならずに、取引履歴未開示部分の推計や冒頭ゼロ計算には乗らないものの、それ以外の点ではおおむねこちらの主張に沿った計算で和解しに来ています(先日、取引未開示の時期の通帳をきちんと提出できた事件で、裁判所から冒頭ゼロ計算を認める余地もあるとして開示分だけの計算ではなくある程度上積みした和解案を出すよう指示があり、開示分での計算と冒頭ゼロの中間あたりの和解をしました:2022年6月16日和解成立)。

裁判上の主張

 ニコスが一番力を入れて主張しているのが、1回払い取引(一定の枠、例えば20万円、の範囲内で自由に借入ができ、それを次の引き落とし日に全部一括で返済するもので、クレジット業界では「マンスリークリア方式」などと呼ばれています)については、過払い金充当合意(かばらいきんじゅうとうごうい)の適用がない、つまり過払い金が生じてもそれが次の借入金と差し引き計算されずに、その時点での過払い金としてそのまま別扱いされて残ったまま(で、10年経ったら時効消滅)になるという主張で、これが通常の消費者金融・信販会社の取引では原則として過払い金がその後の借入金と差し引き計算されることを認めた最高裁2007年6月7日第一小法廷判決の帰結だというのです(オリコが以前から主張していたものをまねしたものだと思いますが)。最高裁判決の言葉の一部には、そう読めないでもない言葉があることもあって、信販会社側の主張に幻惑されてその主張を認めた下級審判決もいくつかあり、過払い金請求をきちんとやってきた弁護士(過払い金返還請求を容易にした/誰でもそこそこの額までなら容易に取り戻せるようにした最高裁2006年1月13日第二小法廷判決後になって過払い金請求を始めるようになって大量宣伝をしているような弁護士ではなく)でも、けっこう困っているような様子を目にします。この論点についての議論と、この論点に関して東京地裁2020年3月27日判決で一連計算が認められ、その間に1年程度の空白期間があっても一連計算できるとされたことは、「過払い金請求訴訟の論点」で紹介しています。


「業者別過払い金請求の実情」の各ページへのリンク

「過払い金返還請求の話」の各ページへのリンク


「相談・依頼」「事件依頼:過払い金請求」へのリンク


 他の項目へのリンク