事実認定が間違っているとか不当な法解釈をしていると、いくら言ってもそれで民事裁判の再審が認められることはありません。法律上の再審理由をきちんと検討しましょう。
判決が100%誤りと証明できるとしてもそれだけでは再審理由にならない
判決に対して上訴(控訴・上告)をしないか、上訴して判決が出てそれ以上の上訴ができなくなる(例えば最高裁で上告棄却・上告不受理となる)と判決は「確定」します(民事訴訟法第116条)。この確定した判決に対して裁判のやり直しを求めることを再審請求と言います。
刑事事件では再審請求や稀に再審開始決定がなされて報道されます。刑事事件ではほとんどの再審請求は、判決の結果(主文)を変更するべき「明らかな証拠を新たに発見したとき」(刑事訴訟法第435条第6号)という再審理由でなされます(そのために有罪判決の重要な根拠となった証拠に関して新たな鑑定をしたりします)。そういった報道から、民事裁判でも同じ理由で再審請求できると思う人がけっこういるようです。しかし、民事裁判では、確定判決が誤りだという決定的証拠を発見したとしても、それだけでは再審理由になりません。
刑事裁判での再審はよく「開かずの扉」と言われています。再審請求が報じられたり、ましてや再審開始決定が出されるような再審請求事件は、日弁連が組織的に弁護団を作って長期間苦心惨憺しているものが多く、それでも滅多なことでは再審開始とはならないのです。民事裁判での再審請求は、その刑事裁判での再審が「開かずの扉」なら、そもそも「扉」というほどの入口もない「針の穴」だと私は思います。
確定判決が誤りだと証明できる証拠があるという主張
民事裁判で再審請求をしたいといって相談に来る人のほとんどは、確定判決が誤りだという証拠を発見したと主張します。
私の経験では、そういう方のいう「決定的証拠」がそれほど決定的に思えないことが多いですし、また確かに判決の間違いを論証できそうな場合でも、その「間違い」が判決の結論に影響しないような重要とはいえない点についての間違いであることがほとんどです。その意味で、判決の結論に影響する(結論、つまり主文を変えさせるほどの価値がある)ような証拠を見せられた経験はほとんどありません。
しかし、仮にその通り確定判決の事実認定に誤りがあることがその証拠によって明らかだという場合であっても、それは民事裁判では再審理由にはなりません。
民事裁判では、確定判決の証拠となった文書や物が「偽造または変造されたもの」であった(民事訴訟法第338条第1項第6号)か、確定判決の証拠となった証言等が「虚偽の陳述」であった(民事訴訟法第338条第1項第7号)ことが必要である上に、その犯罪行為について有罪判決が確定するなどして初めて再審理由となるのです(民事訴訟法第338条第2項)。
そもそも証拠が偽造であることを裁判官に説得することは並大抵のことではありません。民事訴訟法は「私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定めています(民事訴訟法第228条第4項)。さらには「当事者または代理人が故意または重大な過失により真実に反して文書の真正を争ったとき」には過料の制裁もあります(民事訴訟法第230条第1項)。裁判で相手方が提出した証拠書類を「偽造だ」と簡単に言う人がいますが、弁護士の立場からは、証拠が偽造だという主張は、よほどの根拠がないと、その主張をすること自体で裁判官からこちらの主張全体の信頼性を疑われかねず、偽造の立証ができなかったらその裁判はもう負けというくらいの覚悟が必要です。そして証拠が偽造だという立証が成功する可能性はかなり低いものです。
文書その他の物件については「偽造または変造されたものであった」ことが要件とされています。これに関して、作成権限のない者(文書の名義人でない者)が作成したり書き換えたという主張(本来の偽造・変造)ではなく、作成名義人が作成したが内容が虚偽であるという主張がなされることがよくあります。しかし、私文書の場合、診断書・検案書・死亡証書以外は虚偽の私文書を作成しても処罰されませんので、単に確定判決の証拠とされた文書の内容が虚偽であるという主張は、再審理由の「偽造または変造」にはそもそも当たらない(主張自体失当)と解されます(東京高裁2016年4月26日決定。最高裁が同年9月13日第三小法廷決定で是認。判例時報2348号7ページで紹介されています)。(証言等について「虚偽の陳述」と規定されているのとは違うことに注意して下さい)
再審理由としては、証拠が偽造であるとか証言が偽証であることを立証する(それ自体先に述べたようにものすごく大変なことです)だけでなく、有罪判決の確定等が必要ということですから、現実的にはこの理由による再審請求がほとんど無理だということをわかってもらえると思います。
ただこの有罪判決の確定「等」に少し獣道のような細い道が残されています。
民事訴訟法の規定は、正確には「罰すべき行為について、有罪の判決もしくは過料の裁判が確定したとき、または証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決もしくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。」とされています(民事訴訟法第338条第2項)。
わかりにくい条文ですが、ここでいう「証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決もしくは過料の確定裁判を得ることができないとき」というのは、有罪の確定判決を得る可能性があるのに被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分を受けたりして有罪の確定判決を得られなかったときをいうとされています(最高裁1967年6月20日第三小法廷判決)。そうすると、再審請求をしたい人が証拠の偽造や偽証を主張する相手が死ぬか公訴時効が成立すれば、捜査機関が捜査していなくても一応はこの要件を満たすことになります(再審請求はそれらの事実があった日から5年以内、知った日から30日以内に行う必要があります:民事訴訟法第342条第1項、第2項)。もちろん、その場合でも証拠の偽造や偽証を立証しなければ再審請求は認められませんし、その立証が極めて難しいことは先に述べた通りです。最高裁は、このときの立証の程度について、有罪判決をなし得る程度の証拠を要するとした原判決の判断は正当として、捜査権も有しない一般私人が有罪判決をなし得る程度の証拠を収集することは実際上不可能であるから犯罪行為の存在について一応の証明で足りるとすべきという上告人の主張を退けています(最高裁1981年11月26日第一小法廷判決)。
犯罪行為について公訴時効が成立した場合について、最高裁は、再審事由となるべき犯罪を知った時点ではすでに公訴時効期間が経過していた場合または告訴等の手続をとったとしても捜査機関が公訴の提起をするに足りる期間がない場合をいい、「公訴時効が完成するまでに相当の期間があり、かつ、やむを得ない事由がないのに、告訴等の手続をとらないまま公訴時効期間を経過させた場合は含まれない」としています(最高裁1999年11月30日第三小法廷判決)。したがって、証拠の偽造や偽証を再審理由としたいのであれば、まずは告訴を行う必要があります。捜査機関が捜査をして、嫌疑不十分(証拠不足)で不起訴となった場合は再審請求の要件を満たしませんが、起訴猶予処分の場合は、それで再審請求の要件を満たすことになります。
裁判の当事者の法廷での虚偽の陳述の場合、「罰すべき行為について、過料の裁判が確定したとき」が再審請求の要件となりますが、過料の裁判(制裁)の申立て(民事訴訟法第209条第1項)に対して裁判所が特に理由を示さずに職権発動をしない旨の通知をした場合、裁判所が虚偽の陳述があったと判断したかが明らかでないので再審裁判所としては再審請求の要件は満たしたものとして再審事由(虚偽の陳述が判決の証拠となったこと)の有無について判断するほかないという下級審裁判例もあります(東京地裁1999年10月26日判決)。この事案では、1審判決の3年あまり後、確定判決の2年あまり後に1審での1審原告本人尋問の際の供述について過料の裁判申立てがされています。
このような裁判実務を見ると、証拠の偽造や偽証等を理由として再審を希望するのであれば、被疑者の死亡や公訴時効を待つのではなく、速やかに被疑者(偽造・偽証者)を告訴し、また虚偽の陳述をした裁判当事者本人について過料の裁判の申立てをすべきということになります。もちろん、相当の根拠もなく告訴をすることは、その告訴自体が虚偽告訴罪となりますので、偽造や偽証を疑うべき十分な根拠がなければならないのは当然ですが。
文書の偽造について有罪の確定判決がない場合に、被疑者が死亡したり公訴時効が成立し有罪の確定判決を得ることが可能であったことを立証するというのはどのようなことか、最高裁判決で最終的にそれが認められたケースで考えてみましょう。
1969年の株式譲渡の効力が争われた事件で、1968年に作成されたとされる株券が確定判決の証拠となり、1987年に最高裁の上告棄却により判決が確定した後、その株券が1977年以降に印刷されたものだという証拠(印刷所の売上帳及び印刷所の者の証言)が得られたという事案で、1990年に仙台高裁に再審請求の提訴がなされたのに対して、仙台高裁が確定判決の審理に提出された株券は偽造文書であると認めて再審請求を認容し(仙台高裁1994年1月25日判決)、最高裁も、「これらの証拠は、右文書偽造について有罪の確定判決を得ることを可能にするものである」という原判決の判断を是認しています(最高裁1994年10月25日第三小法廷判決)。
判断の遺脱
民事訴訟法は、「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。」も再審理由と定めています(民事訴訟法第338条第1項第9号)。
判断の遺脱というのは、判断が抜け落ちている、つまり判断していないということです。誤った判断をしている場合であっても、判断がなされている以上は、それは判断の遺脱にはなりません。
また裁判上の主張・立証はえてして小さな事実を積み上げていって大きな事実を認定させるということになりますが、その場合の積み上げる小さな事実について判断を示していなくても、最終的な大きな事実について判断していれば、それはやはり「判断の遺脱」にはなりません。
最高裁の2019年11月7日の判決(第一小法廷判決)は、再審としてではなく上告(上告受理申立)での判断ですが、判断の遺脱を認めていますので、この例で、判断の遺脱とはどういうものか、説明します。1年間の期間を定めて雇用された労働者が期間の途中で解雇され、解雇は無効で現在も労働者としての地位があることの確認と解雇後の賃金の支払を求める裁判を起こしました。解雇事件では、このように解雇の無効の確認を求めるのではなく、現在(判決時点でということ)労働者としての地位(正確には「労働者として権利を有する地位」)の確認を求めるのが普通です。有期契約労働者の期間途中での解雇は、普通の解雇の場合よりも(使用者側にとって)厳しい「やむを得ない事由」が必要です。裁判所は、1審判決も2審判決も、「やむを得ない事由」はなく、解雇は無効と判断し、労働者の地位を認める判決を言い渡しました。ところが、1審判決言渡前の時点で、契約期間は終了していたので、解雇が無効だというだけでは、(解雇によってではなく、その後の)契約期間満了で労働者としての地位はなくなっているのではないかという疑問を生じます。判決言渡時点で労働者としての地位を認めるためには、解雇が無効であることだけではなくて、契約期間満了後も労働者としての地位が継続するという事情、つまり有期契約労働者に契約更新の合理的期待があることと雇止めの理由がないこと(普通の解雇であれば解雇権濫用で無効となること)も認定しなければなりません。1審判決も2審判決もこの点について判断をしていませんでした。最高裁は、この点を「判断の遺脱」として、原判決を破棄し、この点についてさらに判断させるために原審に差し戻したのです。
判断の遺脱というのは、上の事例のように、判決の結論(主文)を導くために論理的に不可欠の事項について、判断をしなかった(判断し忘れた)場合を指しているのです。
私の経験上、確定判決に「判断の遺脱がある」と主張して相談に来た人は、確定判決が判決の結果(主文)に影響するような重要な事項について「判断していない」のではなく「誤った判断(その人が受け入れがたい判断)をしている」と言っているか、その人が言う主張が判決に影響しない(判決の結論を導くうえで必要がない)ために裁判官が判断しなかったということが弁護士の眼には明らかなものか、のどちらかです。それはどちらも「判断の遺脱」には当たりません。これまで相談を受けて、なるほどそれは判断の遺脱に当たるかもしれないなと思ったこと自体、ほとんどありません。
確定判決に「判断の遺脱」があったとしたら、それは裁判官の大ポカと言えます。現実に「判断の遺脱」が考えられるのは、判決に至る法律論の構成が難しいか微妙なもので、判決の結論を導くに当たって判断しなければならない法律的な要素について、裁判官が見誤るか、確定判決をした裁判官と再審請求を担当する裁判官の間で意見が異なる場合くらいだと思います。言葉を換えれば、仮に「判断の遺脱」があるとしても、それを素人が発見することはほぼ無理で、素人が「判断の遺脱」だと主張するようなものは裁判官が判断が必要なのを見落としたということはまず考えられず判断の必要がないと確信して無視している(「判断の遺脱」ではない)とみるべきでしょう。
仮に、本当に「判断の遺脱」があると考えられる場合でも、現実に再審理由として主張することには、高いハードルがあります。この再審理由の主張で最も厳しいことに、判断の遺脱があるかどうかは、通常は判決文を読めば明らかなはずです。民事訴訟法は、再審理由があっても、控訴や上告でそのことを主張したときも、逆に再審理由があることを知りながら主張しなかったときも再審の訴えをすることができないと定めています(民事訴訟法第338条第1項但し書き)。判例上、再審理由があることを知りながら上訴しなかったときもこれと同じと解されています。そして、判断の遺脱については、原則として判決文を受け取ったときに知ったものと解され、代理人(弁護士)が知ったときは本人も知ったものと解されています。そうすると、「判断の遺脱」については、それを知らなかったという特別の事情が主張立証できなければ、再審理由として使えないということになります。
訴状・判決の送達をめぐって
民事訴訟法が定める再審理由に、「法定代理権、訴訟代理権または代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。」というのがあります(民事訴訟法第338条第1項第3号)。当事者の代理人として裁判上の行為(答弁書や準備書面の作成・提出など:いうまでもありませんが、その代理人の名前で答弁書や準備書面を作成・提出するのが裁判上の行為で、アドバイスをしたり、書類の原稿を書くのは裁判上の行為ではありません)を行った人が実は権限がなかったという場合です。親権者(父母)や後見人でない人が親権者や後見人と称して裁判上の行為を行ったとか、依頼を受けていない弁護士が裁判上の行為を行ったというようなことです。
実際にこれを理由として再審が認められたケースとしては、1979年頃から自閉、無為、徘徊、被害妄想、幻聴などの症状を呈して精神分裂病(当時)と診断されて入退院を繰り返しており症状が改善していない者を原告として1981年に調停、1988年に損害賠償請求訴訟を、姉が訴状等に原告名を署名押印して提訴しその後弁護士に依頼したが弁護士は原告本人に一度も面接せずに訴訟遂行したという事案(最高裁1995年11月9日第一小法廷判決)、会社が被告の事件で社長が訴状の送達を受けたが取締役が訴訟対応するといって訴状を持ち去り取締役が社長記名の委任状を作成して弁護士に依頼し、弁護士はその取締役とのみ連絡して社長とは連絡を取らず判決書も取締役に交付したという事案(大阪高裁2008年10月14日決定。最高裁2009年2月24日第三小法廷決定で是認。判例時報2085号10ページで紹介されています)があります。
それとは別に、訴状や判決が当事者の手に渡らず、当事者が裁判が起こされていることを知らないまま判決が確定した場合に、一定の事情があるケースについては、この再審理由がある場合と実質的には同じであるとして、手続にまったく関与できないままに判決確定に至った当事者を救おうという試みがなされています。(当事者、実際には被告が、知らないうちに判決が確定したケース一般を救おうとしているわけではないことに注意してください)
最初に問題になったのは、訴状の送達が不適法だった場合です。最高裁は、被告の子(当時7歳9か月)が訴状の送達を受け(郵便配達人から受け取り)訴状を被告に交付せず、被告が訴えの提起を知らないままに判決を受けた(判決は被告の妻が受け取ったが、その裁判は妻が被告の名を用いて買った商品の代金請求であり、妻は被告に判決を渡さなかった)という事案で、訴状の送達が有効でないので、判決が有効に送達されても、「有効に訴状の送達がされず、その故に被告とされた者が訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされた場合には、当事者の代理人として訴訟行為をした者に代理権の欠缺があった場合と別異に扱う理由はないから、民訴法420条1項3号の事由があるものと解するのが相当である」として再審事由があると認めました(最高裁1992年9月10日第一小法廷判決:旧民訴時代の判決なので、民事訴訟法の条文は今とは違います)。
小規模会社で従業員が受領した事案で微妙な判断がなされたものがあります。郵便配達人は被告会社の本店所在地で従業員に訴状等を手渡したという送達報告書を作成しましたが、その者は被告会社の従業員ではなく本店所在地も郵便受けも共通する別会社の従業員で、被告会社で本店に勤務する唯一の従業員が不在がちのため事実上被告会社の郵便物を受領していた、受け取った訴状等は被告会社従業員の机の上に置いたが被告会社従業員は訴状と気がつかずに机の引き出しに入れたまま放置していたという事案で、被告会社が訴状を受領した者に、被告会社宛の郵便物を受領する権限を授与していたことを認めるに足りる的確な証拠はない、両社は緊密な関係にあることがうかがわれるが、役員構成、資本関係等において同族会社や親子会社であるとか、法人格が形骸化しているとまで認めるに足りる証拠はないとして、訴状が有効に送達されていないことを理由に再審開始決定がなされました(大阪高裁2005年11月8日決定。最高裁2006年2月16日第一小法廷決定で是認。判例時報1972号22~23ページで紹介されています)。事実認定としてはかなり微妙な判断になりますが、理屈としては「使用人その他の従業者または同居者」(民事訴訟法第106条第1項)に当たらない者に交付しても有効な送達にならないということです。
次に問題になったのは、訴状や判決を被告の家族等の同居人が受け取り、それで法律上訴状や判決が被告に送達されたことになるけれども、その受取人がその裁判で事実上被告と利害が対立する立場にあるために訴状や判決を被告に渡さず、その結果被告が裁判手続に参加する機会がなかったという場合です。
訴状や判決を受け取った同居人が、勝手に被告を連帯保証人とし、その後貸し主が借り主である同居人と連帯保証人である被告に対して裁判を起こしたというケースで、最高裁は訴状や判決受け取った者がその訴状に関して事実上利害関係の対立があるためにその訴状や判決を速やかに本人に渡すことが期待できず、現に交付されなかった場合は、その本人は訴訟手続に関与する機会を与えられたことにならず、その結果訴訟が提起されていることを知らないままに判決に至った場合には、代理人が代理権を欠く時と異なる扱いをする理由はないから再審理由があると解すべきとしました(最高裁2007年3月20日第三小法廷決定)。
もう1つのパターンとしては、被告が訴状記載の住所に現実に住んでいないのに、住んでいる(住んでいながら受け取りを拒否している)と誤って判断され、「郵便に付する送達」がなされた場合に、被告が訴訟提起を知らず、訴訟に関与する機会を与えられないままに判決に至ってしまった場合があります。この場合については、判決の送達(さらには訴状の送達)が無効であり、判決の送達から2週間が経過していても(いつまでたっても)判決は確定しておらず、被告が気がついた時点でまだ控訴できると認めた判決があり、再審請求を認めた決定もあります(「訴状が届かないとき」で説明しています)。
さらにもう1つのパターンとして、原告が被告の現実の住所を知っていたか調べれば容易にわかるのによく調べないままに、住所不明として公示送達の手続を取った場合、被告は訴状も送られずまったく知らないままに裁判が終わってしまうことになり、そういう場合にこの規定で再審請求ができないかが問題になりました。
そういう場合でも、この再審理由には当たらないという判決が多いです。最高裁は、公示送達によって判決がなされた訴訟中にその原告が被告と会って夫婦間の問題について話し合い、勤務先にも連絡してきたのだから送達場所を知っていたという上告理由に対して、「上告人の主張する事由は民訴法420条1項3号の再審事由に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができる」と判示しています(最高裁1982年5月27日第一小法廷判決:旧民訴時代の判決なので、民事訴訟法の条文は今とは違います)。
下級審では、原告が被告の住所を知っているかまたは重大な過失によって調べれば容易にわかるのに調べずに公示送達による判決を得た場合には、被告はこの規定を類推適用して再審請求できると述べた判決もあります(横浜地裁1978年9月6日判決:その事案では、被告が住民票を移さないまま転居し、住所を知らされていた被告の実母も原告の問い合わせには住所は知らないと答え、公示送達により判決がなされた訴訟の係属中に被告が原告に対して申し立てた離婚調停の手続書類が原告に送られたものの被告は原告に住所を知られたくないとして申立書等には真実とは異なる住所を記載しており原告が家庭裁判所に被告の住所を問い合わせても家裁は答えなかったという経緯から、公示送達により判決がなされた訴訟で裁判所に離婚調停申立てがあった事実を告知しなくても重大な過失があったとは認められないとして再審請求は認められませんでしたが)。
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