自分で取引履歴を取り寄せたとき、どこに注目すればいいか、わかりますか。
取引履歴の取り寄せ
ここでは貸金業者から取り寄せた取引履歴から過払いかどうかの判断をするためにどのようなことをチェックすればよいかを説明します。
取引履歴は、弁護士に債務整理や過払い金請求を依頼すれば、弁護士が貸金業者に請求しますが、自分で請求することもできます。個人情報保護法や貸金業法で、貸金業者は借主(借主だった者も)が自分の取引履歴等の情報請求をした場合に拒否できないことが明確に定められています(個人情報の保護に関する法律第25条、貸金業法第19条の2)。貸し借りの継続中に取引履歴の開示請求をしても不利益はありません。
取引履歴の請求は、今どきならその業者のサイトに請求方法が書いてあるのが普通ですから、それに従って行うか、よくわからなければその業者に電話して聞けば教えてくれるはずです。
取引開始時期と約定利率
取引履歴を取り寄せたら、まず確認すべきことは、取引の開始時期です。開示されている取引履歴の一番最初(たまに取引履歴の順序が逆で現在から遡る形の履歴を出してくる業者がありますが)が、自分がその業者から初めて借り入れたときとあっているかを確認します。
それによって、貸金業者が取引履歴の全部を開示しているのか、途中から開示しているのかを判断することになります。
一応、借入当初の利率が年何%だったのかも確認しておくといいでしょう。貸金業者によって、開示する取引履歴のフォーマットが違い、さらにいえば同じ貸金業者でもその時々というか本人と弁護士で開示パターンを変えたりすることがありますから、何の項目が書かれているかはそれぞれです。最も普通のパターンは、取引日、借入(貸付)額、返済額、約定利息額、遅延損害金(延滞利息)額、元本組み入れ額、約定残高(元本)だと思いますが、契約・解約、ATM・店頭・振込、約定利率、契約番号などが入っているときもあります。CFJの場合、日付と借入額、返済額だけで約定残高が入っていないという信じがたい開示パターンもありますし、エポスカード(丸井)や三菱UFJニコス(旧日本信販)などのように利息制限法引き直し計算書の形で開示して約定残高が書かれていない場合もあります。
約定利率を書いていない場合、約定利率は、約定利息額が記載されている場合は、約定利率=約定利息額÷前回借入残高÷前回からの経過日数×1年の日数で求めることができます。この計算をするときは、平年と閏年をまたがず、返済が2回続いているときの2回目(その2回目の支払が遅れていないときを選ぶ)で行います。約定利率を確認することで、利息制限法引き直しで借金が減額できることと、その程度の目安を確認することができます。また、約定利率が途中で変わっているかどうかによって、契約書の書き換えがあったかどうかを確認する手がかりにもなります。
取引の内容
次に、取引履歴の借入額や返済額借入残高をみて、開示された取引が自分の記憶にあっているかを確認します。手元に取引明細書が残っていれば照合してみるとよいでしょう。
取引明細書が全くない場合、借主は、貸し借りの内容について、詳しくは覚えていないことが多いですが、まとまったお金を借りた時期と額や、毎月の返済額は、ある程度覚えていると思います。また、借入残高の推移は概ね覚えているものかと思います。
貸金業者の開示は、多くの場合は正しいと思いますが、虚偽の開示をしてくることがあります。アコムが、裁判所に提出する再計算書で虚偽の数字を入れて提出していたことが2002年12月に発覚したという事件もありました。数字を操作した場合、約定残高は借主が気にしていたり取引明細が1枚でも手元に残っているとばれやすいので、約定残高の記載のない形でなされます。アコムの虚偽開示がまさにそうでした。貸金業法は帳簿に約定残高の記載を義務づけ(貸金業法第19条:「貸付けの金額」)、借主の帳簿閲覧請求権を定めています(貸金業法第19条の2)から、貸金業者は約定残高を開示する義務があります。先にも紹介したようにそれにもかかわらず約定残高を開示しない貸金業者があります。こういう貸金業者の場合、特に開示に操作がないか疑ってかかるべきでしょう。
完済と解約の有無
現在の過払い請求の実務では、完済とその後の借入のない空白期間、解約・再借入時の新規契約の有無が、非常に重要な意味を持っています。
取引履歴に契約・解約の記載がある場合(アコム)は、完済時に「解約」の記載があるか、再借入時に「契約」の記載があるかを確認します。契約番号の記載がある場合(プロミスがケースによる)は、再借入時に契約番号が変わっているか完済時と同じかを確認します。
そういった記載がないとしても、約定残高の記載がある場合(ほとんどの場合)は約定残高がゼロになったことがあるか、その後再度借入をするまでにどれだけの期間が経っているかを確認します。その際、完済時と再借入時で約定利率が変わっているかどうかも念のために確認します。約定利率が同じ場合は同一の契約であり一連計算できる可能性があります。約定利率が変わっていても下がっているときは、なお一連計算の可能性はあります。利率が上がっているときは、基本的に厳しい方向の話になります。
空白期間が長く、完済時期が10年以上前の場合は、過払い金が大幅に減額されたり、取引期間が長くても借金が残るということになる可能性が高くなります。
きちんとした判断は、弁護士に任せた方がいいと思いますが、取引履歴を見れば、とりあえずこういうことをチェックすることで、過払いの可能性や規模についておおよその判断をすることができます。
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