弁護士費用はどれくらいか、なんとなくじゃなくて、具体的にイメージできますか。
弁護士費用の種類:一般的説明
弁護士費用は、通常の、相手方があって紛争となってそれを解決する事件では、依頼を受けるときに「着手金」という定額の費用をいただき、事件(裁判等)が終了したときに、「報酬金」という事件解決の内容に応じた費用をいただきます。「着手金」は「報酬金」の内金ではありません(「報酬金」を決めるときは、その金額から「着手金」を引いて支払うのではなく、「着手金」とは別に支払います)。依頼者が全く利益を受けなかった場合(全面敗訴の場合)は、「報酬金」は発生しませんが、「着手金」はその場合でも原則としてお返ししません。
相手方と争うタイプではない事件では、依頼を受けるときに「手数料」という定額の費用をいただく契約をすることがあります。その場合は、実質は、「着手金」と同じ扱いで、ただ「報酬金」がないものと考えてください。
事件のために遠方に出張する場合は、旅費・日当をいただきます。私の場合、東京地裁、千葉地裁本庁、横浜地裁本庁、さいたま地裁本庁では、日当はいただいていません(交通費実費はいただきます)。それより遠いときは、報酬契約時にご相談ということになりますが、1回につき交通費+1~3万円程度をいただくことがあります(原子力施設関連の裁判以外では、遠方の事件はほとんど受けていないのですが、本当に遠方の事件を受任することになったらもっといただくことになるかも知れません)。
以上の弁護士がいただく費用と別に、裁判等の法的手続では、裁判所に納める費用(訴状に貼る印紙代が請求額に応じて1%弱程度、提訴時に納める切手が被告1人のとき6000円程度など)や実費(交通費や記録謄写料等)がかかります。実費は依頼を受けるときに概算で預かり、そこから必要に応じて支出して、終了時に精算するのがふつうです。
一般民事事件の弁護士費用
着手金:請求額が1000万円未満の標準的な訴訟は原則として30万円+消費税
請求額が1000万円以上か、通常よりも手間がかかる訴訟は原則として50万円+消費税
報酬金:お金や金額を評価できるものが問題となる事件では結果的に得られた利益の10%+消費税
(請求する側は取れた額、請求された側は取られずに済んだ額を基準とします)
お金で評価できないことが問題となる事件では、それが得られた場合は着手金と同じ額
この着手金の基準は、私が弁護士会で弁護士報酬の審査をしてきた感覚では安めだと思っていますが、もちろん業界最安値などではありません。特に請求額が低い場合は割高に思えるかも知れません。この基準は司法支援センターを利用しない場合(つまり収入・資産が相応にある場合)の基準ですし、私は全ての事件を自分で直接に担当し、経験の浅い弁護士などの他人に任せることはありませんので、1件1件をきちんとやるためには最低限この程度は必要ということもあります。
控訴審・上告審からの依頼の場合
着手金:比較的事件記録が薄い場合は原則として30万円+消費税
比較的事件記録が厚い場合は原則として50万円+消費税
報酬金は一般事件の場合と同様
本人訴訟か別の弁護士に依頼して敗訴し、控訴審や上告審から私に依頼するという場合です。私のサイトの「控訴の話(民事裁判)」や「まだ最高裁がある?(民事裁判編)」を読んで、相談や依頼に来る方が割といます。その場合の基準です。
控訴審・上告審は、実質的には控訴理由書、上告理由書または上告受理申立理由書を作成するだけになることが多いですが、そのために検討すべき書類(判決、証拠書類、証言調書、準備書面類)が相当な量になりますので、弁護士の労力はかなりのものになります。簡単な文書作成ではありませんので、数万円程度で受任することはとてもできません(時々そのレベルのものと考えて依頼したいと言ってくる方がいますので、予め、そこははっきり言っておきます)。
なお、この場合、法テラス利用はできないと考えてください。敗訴後の控訴審・上告審では、法テラスが「勝訴の見込みがない」として援助を拒否することが多く(私は、上告審で裁判所が弁論を開くと言ってきた/普通に考えれば裁判所が原判決を見直すと言っている事件で、そのことを書いて援助申請したのに、法テラス東京地方事務所から「勝訴の見込みに乏しい」として援助拒否され、愕然とした経験があります)、私も控訴審・上告審は、自分がかける労力から言って、法テラス利用では受けたくない気持ちがあります。
労働事件
労働事件の場合も、解雇・雇止め事件以外の労働事件は一般民事事件と基本的に同じ考え方です。解雇・雇止めの事件では、本人の収入がなくなりますので、配偶者(妻・夫)の収入が多いか、貯金が法テラスの援助基準を上回らない場合は、法テラスの代理援助制度を利用することが多くなります。法テラス利用をしない場合について、解雇・雇止め事件では、地位確認の評価、金銭解決(合意退職和解)が月例賃金何か月分かが基準となりそこに労力と弁護士の経験が相当反映されるという特殊性から、以下のようなことをめやすにしています。また、労働事件では、近年は労働審判という手続があるので、これは裁判よりは低い着手金で受けています。
【解雇・雇止め事件】
着手金:一般的な理由の解雇・雇止め事件は原則として30万円+消費税
懲戒解雇事件、解雇理由が複雑な解雇事件、解雇の有効・無効が微妙な事件は原則として50万円+消費税
報酬金
《労働者の地位を確認する判決を得た場合、または和解による復職を得た場合》
地位確認の報酬として、月例賃金(裁判で請求したバック・ペイの月額:原則として支給総額から通勤手当と残業代を差し引いた毎月決まって支払われる額)の3か月分+消費税
それに伴いバック・ペイ等の金銭の支払を受けたときは、その報酬として、支払を受けた金額の10%+消費税
《金銭解決(合意退職和解)の場合》
支払を受けた解決金の月例賃金12か月分までは10%+消費税、それを超える部分は20%+消費税
【労働審判】
着手金:20万円+消費税
報酬金:金銭解決の場合、支払を受けた金額の10%+消費税
過払い金請求
過払い金請求では、私の認識では、完済している案件(過払いであることが確実な案件ともいえます)では、着手金なし、報酬金は取れた金額の20%+消費税というのが、業界の標準だと思います(実際には、着手金あるいは報酬金でこれと別途1社あたり何万円かの固定額をとっている事務所があったりするようですし、裁判の場合には報酬を高くしている事務所もけっこうあるようですが)。わざわざ広告で「着手金ゼロ」を売りにしている事務所があるのは、驚きです。私は、固定額の着手金・報酬金はいただきませんし、報酬金は裁判を行う場合も20%+消費税で変わりませんし、裁判実費の印紙・予納郵券(提訴時に必要な費用)も私の負担でやっています(こうしている弁護士はたぶんまれ)ので、実際にはかなり安い方に属していると思います。しかし、最初に言ったように、安さを売りにする気はありません。そもそも、過払い金請求は、特に貸金業者が簡単には応じず裁判でも執念深く粘るようになった昨今では、いくら回収できるか自体が、弁護士の腕により相当変わってきていますので、弁護士費用の%を基準に考えるべきではないと思います。
過払い金請求の事件では、法テラス利用ではやっていません。法テラスの代理援助制度は、着手金を立て替えて分割払いする制度です。私は過払い金請求では着手金をとっていませんので、法テラスを利用する意味がありません。
着手金なし、訴訟費用のうち提訴時の印紙と郵券は私の負担(ただし、報酬金が実費を下回るときは依頼者負担)
完済している案件では、報酬金は、回収した金額の20%+消費税
完済していない、約定残高がある案件では、報酬金は、減額分の10%+消費税と回収した金額の20%+消費税の合計額
「相談・依頼」の各ページへのリンク
他の項目へのリンク